vol.5 フェイス FACES
今号では、人間の「顔」、写真と肖像の関係性について考えてみたいと企画し、主題を「フェイス/Faces」としました。
巻頭作家は、金川晋吾さんとRyu Ikaさんです。初めて2名の作家の方に巻頭を飾っていただきます。
発行:2024年1月20日
仕様:A5判変形
発行:ふげん社
制作:合同会社PCT
ISBN:978-4-908955-25-9
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巻頭言
肖像写真の歴史は、写真術の誕生と同時に端を発します。人はなぜ、人の姿を後世に伝えるべく写真に撮り、残しておきたがるのでしょうか。人間の「顔」をめぐる写真的試みは、写真館での肖像写真から、家族のアルバム、スマホでの自撮り写真まで、これまでさまざまな手法によって人々の生活に溶け込み、発展してきました。
一方、写真表現において、「悲しそうな顔をした猫の図鑑はない」、写真は「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」ものでなければならないと主張した中平卓馬による『なぜ、植物図鑑か』(晶文社/1973年)の問いかけは、当時の写真界、写真家たちに大きな衝撃をもって受け入れられました。
それから半世紀となる二〇二三年の現在、写真や画像をめぐるテクノロジーは加速度的な進化を遂げ、この世に実在しない猫の写真をいとも簡単に生成すること(「These Cats Do Not Exist」)も可能となり、生成AI技術、ディープフェイクなどが日常化し、人々は写真に映る事物の存在そのものを問われるようになりました。
雑誌『写真』5号では、人間の「顔」、写真と肖像の関係性について考えてみたいと企画し、主題を「フェイス/Faces」としました。
長引くコロナパンデミックは、人々の生活をドラスティックに変え、あらゆる既成概念が根本から覆されるような時代状況のなか、一枚の写真のもつ意味や解釈もさまざまな変革を問われています。
人がマスクで顔を隠すことが当たり前となった期間や、オンラインによる人と人とのコミュニケーションのあり方は、人間の「顔」というものを鏡のように浮かび上がらせ、自己と他者、リアルとバーチャル、とりわけ自分の「顔」というものについてあらためて考えるきっかけになったのではないでしょうか。
人間はなぜ顔に注目するのか、地球上の生物にとって顔とは何か、顔の写真は未来に何をもたらすのか、読者の皆さんと共に考えていきたいと思います。
Contents
[口絵 ARTWORKS]
巻頭
金川晋吾 Kanagawa Shingo
Ryu Ika
有元伸也 Arimoto Shinya
鈴木理策 Suzuki Risaku
星 玄人 Hoshi Haruto
山元彩香 Yamamoto Ayaka
中平卓馬 Nakahira Takuma
(解説=相模友士郎)
[LONG ESSAY]
大山 顕「プロパティ化する顔写真」
髙橋義隆「名作ポートレート写真集から「時代」を読む」
鳥原 学「各地に起きたインディペンデント・フォトグラファーたちのうねり」後編(一九八〇~二〇〇〇年代)
三橋 純「次世代・生成アイドル写真論」
[SPECIAL]
森村泰昌 Morimura Yasumasa
[CURRENT REVIEW]
飯沢耕太郎「時評 写真評論家の眼」
[INTERVIEW]
巻頭対談・金川晋吾×Ryu Ika(聞き手=飯沢耕太郎)
顧 錚「東アジア地域における独自の写真表現」(聞き手=許 力静)
遠藤文香「北海道の地で解き放たれた写真 ―― 色彩と光を描く写真家」
九州男「ストリートスナップは「人が集まる人の研究」」
浜崎加織(東京都写真美術館 学芸員)「日本の新進作家展vol.20 見るまえに跳べ」
[REPORT]
うつゆみこ『Wunderkammer』
今、最も熱い文化の交差点「京都 蔦屋書店」
エプソン×MONO GRAPHY Camera & Art
アトリエ シャテーニュ 大野深美(聞き手=GOZEN)
[CAMERA REVIEW]
コシナ×大門美奈
パナソニック×中藤毅彦
リコー×草野庸子
シグマ×百々 新
焦点工房×石井靖久
[COLUMN]
河内タカ
きりとりめでる
熊倉 献(漫画)
原島 博(日本顔学会)
柊サナカ(小説)
[MECHANISM]
座談会:中藤毅彦、鶴巻育子、菅原隆治(CAPA編集長)
[PHOTOBOOK]
須々田美和(Dashwood Books)
青山ブックセンター本店/火星の庭/ペンギン文庫/SUT/ひばりブックス/リバーブックス/DOOR
[EXHIBITION REVIEW]
タカザワケンジ、タシロユウキ