vol.3 スペル SPELL
写真と言葉の復権に着目した第3号のテーマは「スペル」。
写真家が紡ぐ言葉、写真の周辺で語られる言葉、写真そのものが語りかけるもの―今号で紹介する写真と言葉が魔力となって、次なるアクションの一つの契機となることを願います。巻頭とカバーは、日本を代表する写真家の一人、川田喜久治が撮り下ろした「ロス・カプリチョス 遠近」を掲載。口絵は宇田川直寛、オノデラユキ、草野庸子、熊谷聖司、白石ちえこ、吉増剛造。
芥川賞作家・柴崎友香の書き下ろし短編小説と鷹野隆大の写真のスペシャルコラボレーション、アレック・ソスのインタビューなど見どころ満載の296 ページで、写真と言葉の魔力に迫ります。
発行:2023年1月20日
仕様:A5判変形
発行:ふげん社
制作:合同会社PCT
ISBN:978-4-908955-21-1
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巻頭言
人は太古の昔から、言葉とともに生きてきました。
言葉によって意思や感情、想起する物事を他者へと伝達し、
生きていくことは、言葉を話したり聞いたりすることと分かちがたく、
それらの歩みは人の歴史そのものとも言えます。
そして、絵画についで近代に生み出された写真は、
言葉に取って代わるほどの共感性、瞬発性を有するビジュアルコミュニケーションツールとなり、
さまざまに変容しつつ、互いに補完関係を保ちながら存在してきました。
現在、インターネットを中心としたデジタル情報社会では、
言葉も写真もかつての威厳を失い、軽く、速く、遠くへと、瞬時に世界中を飛び交い、
ネット上の中空をノイズのように漂っています。
雑誌『写真』第三号では、写真と言葉の復権に着目し、
テーマを「スペル」としました。
スペルは、日本語では文字を綴ることを意味する「spelling」と同義で広く使われていますが、
英語では呪文や魔力といった意味を含む単語とされています。
写真も儀式めいた手法によって目にしたものを切り取り、
人々に伝播していく感染呪術のようなものなのかもしれません。
人は言葉なしに写真を考えたり、語ることはできず、
写真と言葉はどちらも世界との距離を示すツール、記号であると同時に、
その連なりが人と人とを結びつけ、時には人々の心を揺るがし、
世界を覆う多様性、複雑さをつなぎとめる力を含んでいます。
今号では、写真と言葉の関係が歴史的にどう展開してきたかを示しつつ、
現代日本写真をめぐる新しい糸口を提示します。
誰もが気軽に写真を撮ることができるようになったいまだからこそ、
写真家が紡ぐ言葉、写真の周辺で語られる言葉、写真そのものが語りかけるものなど、
今号で紹介する写真と言葉が魔力となって、次なるアクションの一つの契機となれば幸いです。
編集長 村上仁一
Contents
[口絵]
川田喜久治 Kikuji Kawada
宇田川直寛 Naohiro Utagawa
オノデラユキ Yuki Onodera
草野庸子 Yoko Kusano
熊谷聖司 Seiji Kumagai
白石ちえこ Chieko Shiraishi
吉増剛造 Gozo Yoshimasu
[LONG ESSAY]
打林俊/飯沢耕太郎/大竹昭子/岡崎武志
[INTERVIEW]
アレック・ソス(聞き手=速水惟広)
[SPECIAL]
柴崎友香(小説) × 鷹野隆大(写真)
書き下ろし短編「その人には見えている場所を見てみたいって思うんです、一度行ったことがあるのに道がわからなくなってしまった場所とか、ある時だけ入口が開いて行くことができる場所のことを考えるのが好きで、誰かが覚えている場所にもどこかに道があるんじゃないかって、と彼は言った」
[CROSS TALK]
雑誌『スピン / spin』編集長・尾形龍太郎 × 雑誌『写真』編集長・村上仁一
渡部さとる × 西田航
[ESSAY]
阿古真理/小髙美穂/三好壮太郎/日比麻音子/しりあがり寿/広瀬勉/野崎歓/ガンダーラ井上/吉田隼人/柳本尚規
[BOOK]
T&M Projects
スタンダードブックストア
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長崎次郎書店
王露 新作写真集『Frozen are the Winds of Time』
[review]
タシロユウキ